2010年9月14日

事情判決

取消訴訟において、「処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるとき」は、裁判所は、請求を棄却することができる。これを事情判決という。31条1項。

① 主文において違法性を宣言する 

公益性を優先させて行政側が勝訴したが、違法性があることには変わりはない。そこで、主文において違法性を宣言する。判決には、既判力が働く。


② 訴訟費用は行政側が負担する

実質的には行政側の敗訴。訴訟費用は行政側が負担する。


主観訴訟とは、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」であり、当然に裁判所司法権)の権限に属する。

客観訴訟とは、これに対して「法律上の争訟」にあたらず、「法律において特に定め」た場合にのみ、例外的に許される訴訟類型である。行政事件訴訟法第42条

行政事件訴訟法は、行政事件訴訟として、抗告訴訟当事者訴訟民衆訴訟及び機関訴訟の4種を挙げる(第2条)。このうち、前2者、抗告訴訟と当事者訴訟が主観訴訟であり、後2者、民衆訴訟と機関訴訟が客観訴訟である。

主観訴訟抗告訴訟
当事者訴訟
客観訴訟民衆訴訟
機関訴訟


1、行政事件訴訟法においては、抗告訴訟とは、6種類(処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴え)が定められているが、これら法定された形式以外の訴訟形式を、講学上、無名抗告訴訟という。行政事件訴訟法3条。

2、取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6箇月以内に提起しなければならず、訴訟提起前に審査請求をすることが定められている場合でも、審査請求があった日から3箇月を経過しても裁決がないときは、提起できる。同法8条2項1号、14条1項。

3、当事者訴訟とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。同法4条。

4、民衆訴訟とは、地方自治法上の住民訴訟、公職選挙法上の当選訴訟、選挙訴訟などがこれに当たり、法に定める者のみが出訴できる訴訟であり、このうち、住民訴訟について、地方公共団体の納税者であることが出訴資格とはされていない。同法42条、地方自治法242条の2。

5、機関訴訟とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。行政事件訴訟法6条。