2010年9月15日

旭川市国民健康保険条例事件

「憲法84条は、課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で明確に定められるべきことを規定するものであり、直接的には、租税について法律による規律の在り方を定めるものであるが、同条は、国民に対して義務課し又は権利を制限するにはの法律根拠を要するという法原則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきである。
したがって、国、地方公共団体等が賦課徴収する租税以外の公課であっても、その性質に応じて、法律又は法律の範囲内で制定された条例によって適正な規律がされるべきものと解すべきであり、憲法84条に規定する租税ではないという理由だけから、そのすべてが当然に同条に現れた上記のような法原則のらち外にあると判断することは相当ではない。
そして、租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである……。」
旭川市国民健康保険条例事件、最大判平成11年8月1日。

旭川市国保料訴訟(あさひかわしこくほりょうそしょう)とは、旭川市国民健康保険の一般被保険者である杉尾正明が、平成6年度分から平成8年度分の保険料について、条例で保険料率を定めず、これを告示に委任することが、租税法律主義を定める憲法84条またはその趣旨に反するなどとして、賦課処分の取消しを求めるとともに、同市の条例が恒常的に生活が困窮している者を保険料の減免の対象としていないことが生存権を定める憲法25条や法の下の平等を定める憲法14条に違反するとして、減免非該当処分の取消しを求めた訴訟である。
最高裁大法廷は、平成18年3月1日原告の主張を退け、憲法に違反しないとした。なお、この訴訟は本人訴訟で最高裁まで争った訴訟としても有名である。