食品衛生法は、競業者の具体的利益を保護すべきものとする趣旨を含むものとは解されない。
よって、近隣の飲食店営業者が営業上の利益を害されるとして取消訴訟を提起した場合、近隣の飲食店営業者は、法律上の利益を有せず、原告適格を有しない。
裁判所は、原告適格を欠くため却下判決により訴訟を終局させなければならない。
▽判決の種類
| 判決の種類 | 意 味 | ||
|---|---|---|---|
| 却下判決 | 訴えが訴訟要件を欠いており、その不備を補正できない場合に、訴えを不適法として却下する判決 | ||
| a. | 却下判決は本案の審理を拒絶するものだから、裁判所は口頭弁論を経ないで、却下判決をすることができる | ||
| b. | 却下判決は、本案について何も判断していないのだから、これによって処分の適法性が確定するわけではない | ||
| 本案判決 | 請求の当否を判断する判決をいう | ||
| 認容判決 | 処分の取消しを求める請求に理由があると認め、処分を取り消す判決 | ||
| 棄却判決 | 処分の取消しを求める請求に理由がないとして、これを排斥する判決 | ||
| a. | 棄却判決に不満がある場合に、原告は上訴することができる | ||
| b. | 原告の上訴がない場合に、処分の適法性が確定する | ||
| 事情判決 | 処 分または裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償または防止 の程度および方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分または裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却すること ができる(31条1項)。この場合の棄却判決のことをいう | ||
| a. | 事情判決をする場合に、当該判決の主文において、処分または裁決が違法であることを宣言しなければならない | ||
| b. | 事情判決は原告にとって敗訴を意味するが、訴訟費用の負担において、被告である行政側が負担 | ||
| c. | 事情判決に対しては、原告側は処分の取消しを求めて上訴することができる。また、被告側も違法宣言に不服があれば、処分が適法であることを確定するために、上訴することができる | ||
▽判決の効力
| 既判力 | 裁判の蒸し返しを防ぐ効力(7条、民事訴訟法114条) | ||
|---|---|---|---|
| → | 判決が確定することで、すでに争った事項に関しては二度と争うことができなくなる | ||
| ① | 請求認容判決=取消判決があった場合 | ||
| a. | 既判力によって、当該処分の違法性が確定する | ||
| b. | 行政庁は、当該処分の違法を理由とした国家賠償請求訴訟などにおいて、処分が適法であったと主張することはできなくなる | ||
| → | 処分が違法であったことを前提として、審理されることになる | ||
| ② | 棄却判決があった場合 | ||
| a. | 既判力によって、当該処分の適法性が確定する | ||
| b. | 原告は、他の違法性を主張して、再び処分の取消しを請求することはできない | ||
| 形成力 | 行政処分の取消判決があると、当該行政処分の効力は、行政庁が取り消すまでもなく遡及的に消滅し、はじめから当該処分が行われなかったのと同様の状態になる | ||
| 拘束力 | 処分または裁決をした当事者である行政庁その他の関係行政庁を拘束する(33条1項) | ||
| → | 行政処分の取消判決があったので、その処分が行われる前に戻り、処分をやり直す。前と同じ処分はできない | ||
| 対世的効力 | 取消判決の効力は、訴訟当事者のみならず、第三者に対しても及ぶ(32条1項) | ||
| → | この対世的効力があるため、訴訟の結果により、権利を害される第三者について、訴訟参加の制度が存在する | ||
行政事件訴訟法9条-原告適格